作品づくりのための台本を書こう

 いろいろな人と協力して動画などの映像作品を作るためには、作品の設計図となる台本が必要です。作品をどうやって作っていくのか、すべての人がわかるように、わかりやすい台本を作らなければなりません。そこで今回は、台本を作る前に知っておきたい話の組み立て方、台本の「型」であるひな形、実際の台本の書き方から仕上げまでをくわしく解説します。

話の組み立て方

 映像作品を作るためには、まず文章を組み立てましょう。わたしたちの身のまわりの文章には、いろいろな種類があります。例えば、筆者が言いたいことを伝えるような説明文や論説文、物語が進んでいくような物語文や小説文などがあります。みなさんも国語の授業で習ったことがあると思いますが、文章を組み立てるときの基本は、「はじめ・なか・おわり」です。このように文章を3つの要素で構成すると、論理的でわかりやすい話になるとされています。「はじめ」は、これから話すテーマや、話が進む前に知っておいてほしいことを書く部分です。「なか」では、テーマの内容について説明したり、物語が展開したりします。そして「おわり」では、自分の主張したいことや、文章全体のまとめを書きます。それでは、文章の組み立て方を具体的に見ていきましょう。

きっちりとした印象の「三段構成」

 三段構成というのは、序論・本論・結論の3つの構成から成り立つ文章の書き方です。説明文や論説文、解説文、提案文のように、自分の主張(言いたいこと)を伝えるような文章であれば、この構成がよいでしょう。大学生が書くレポートや論文などでも使われています。

序論(はじめ)

 序論は、次のような流れで書いていきます。

前提:だれもが知っていることや、事実を書きます。

意見の紹介と反論:他の人の意見を紹介し、それに対しての反対意見などを書きます。

問い:この話のテーマを書きます。

問いを解決するための手順を紹介:テーマをはっきりさせるための手段を書きます。

仮の結論:最後にわかったことや、自分の主張を書きます。

 「意見の紹介と反論」が難しく思えるかもしれませんが、他の人の意見を聞いて「〇〇と言っているけど、~~だから自分は××だと思う」と考えることはありませんか?これが反論で、××という部分が結論にあたります。その結論に説得力をもたせるために、手順を示して問いを解決していけばいいのです。

 動画の場合は、「意見の紹介と反論」よりも「問い」を先に出して、話の道しるべをつくっておくと、見る人はテーマがわかりやすくなります。また、序論で「仮の結論」を入れずに、最後まで結論を残しておく場合もあります。

本論(なか)

 序論で紹介した手順で、定義や意味を調べたり、他のものと比べて考えたりしていきます。そして、その手順で問いを解決した結論も、簡単に書いておきます。

結論(おわり)

 ここでの結論は、自分の主張したいことを書きます。序論で書いた結論を、少し言い方を変えて書くのがおすすめです。

ストーリー向けの「三幕構成」

 三幕構成は、ディズニー映画やドラマなどの基本の構成で、「設定・対立・解決」の3幕で構成されています。物語文や小説文、伝記、体験談のように、創作の物語やだれかの人生についての文章であれば、この構成がよいでしょう。動画にしたときの時間の長さは、「設定」を1とすると、「対立」が2、「解決」が1とします。120分の映画なら、「設定」が30分、「対立」が60分、「解決」が30分というように、「対立」の時間の長さは、「設定」と「解決」の2倍になります。

設定(はじめ)

 ここでは、物語の前提を説明します。物語の始まりや主人公、設定、現在の状況、小さな変化などを入れて、最後に大きな変化を描きます。

対立(なか)

 ここは物語の本筋です。ここでは、主人公が何度か壁にぶち当たる姿を描きます。

解決(おわり)

 ここでは、物語の結末を描きます。事件などを解決するだけでなく、主人公に関係する問題も解決すると、より深い物語になります。

台本のひな形

 上の写真が、作品の設計図ともいえる台本の「型」、ひな形です。これが基本の型なので、必要であれば照明なども書き足します。ちなみに、演劇やドラマ、アニメ、ニュースの台本は縦書きですが、バラエティやワイドショー、CMは横書きがほとんどのようです。

時間

 右の「時間」は、作品の中で経った時間を表すものです。2分40秒であれば「2’40″」というふうに、「’」で分、「”」で秒を表します。時間は「゜」で表すので、3時間24分50秒は「3゜24’50″」となります。ナレーションなどをあとで入れる場合は、自分でナレーション原稿を読んで時間を計って、だいたいの時間を入れておくとよいでしょう。

音声

 真ん中の「音声」には、出演者のセリフや、ナレーションで読み上げる原稿を書きます。また、作品の中で流す音楽、動きに合わせた効果音などをどのように入れるかも書きます。ひな形の「音声」を2つに分けて、原稿と音楽を別にしてもいいでしょう。

映像

 左の「映像」には、どのような場面で撮影した映像を使うかを書きます。まだ撮影していないものは、どんな映像が必要かメモとして書いておくといいでしょう。また、作品の途中に入れる映像や画像、字幕なども書き入れていきます。字幕とは、映像に合わせて入れる文字のことで、テロップということもあります。文字の種類や大きさなどで、見る人の印象を変えることができるものです。

台本の書き方と仕上げ

1.構成した内容を話し言葉にする

 三段構成や三幕構成という構成が決まったら、考えた内容を話し言葉に書き換えます。あとで役に立つので、Wordなどの機能を使って文字数を数えることができるようにしておきましょう。

2.音読して時間を計る

 話し言葉に書き換えた原稿を音読して、時間を計ります。音読することで、だいたいどれくらいの時間がかかるかわかるだけではなく、誤字や読みにくいところを見つけることができます。

3.原稿の長さを調整する

 音読してうまく時間に収まらなかった部分を調整します。セリフやシーンを増やしたり減らしたりして、時間に合うように原稿を書き直していきます。だいたい400字で1分なので、参考にするといいでしょう。また、音読する中で見つけた誤字や読みにくいところも、ここで直しておきましょう。

4.原稿を台本に入れる

 決定した原稿の内容を、台本に書き入れます。本番に出演者が台本を見ることができず、暗記しなくてはいけないという場合は、カンペを用意しておくとよいかもしれません。カンペというのは大きい紙やスケッチブックのことです。セリフや段取りを書いて、カメラに映らない位置で出演者に見せるために使いましょう。

5.全体の時間の長さを決める

 全体で何分の動画を作成するか決めます。三段構成や三幕構成など「はじめ・なか・おわり」で話を組み立てている場合は、三幕構成のところで説明したように、時間配分を「はじめ」を1、「なか」を2、「おわり」を1にすると、バランスよく仕上がります。

6.最後のチェックをする

 最初にお話したように、台本は作品の設計図なので、作品に関わるすべての人にわかるようにできていないといけません。完成した台本を見て、すべての人が何をすればよいかわかるようになっているかチェックしましょう。わかりにくいところや変えたほうがいいところはないか、疑いの目で見てみるといいかもしれません。

まとめ

 面白い台本をすらすら書くには、まず「はじめ・なか・おわり」の構成を使ってしっかりした構成を作り、台本はひな形を使って、時間配分を考えながら原稿を完成させることが大切です。最初のうちは慣れないかもしれませんが、ぜひいい台本を作ってみてください。

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