プロジェクト詳細

 本研究開発は、大学発新産業創出基金事業「PSI・GAPファンド支援プログラム ステップ1」(2025年度採択)として実施され、2025年11月1日から2026年10月31日までの期間で行います。本プロジェクトは、学校教育における生成AI活用の新たな道筋を示す革新的な取り組みです。

【課題の概要と目指す価値】
 このプロジェクトは、生成AI技術と次世代型の教育手法である「概念型探究」を組み合わせ、教育現場の教職員を対象としたAI活用研修とフォローアップのパッケージのビジネスモデル基盤を構築することを目指しています。
 現在の学校現場では、文部科学省の推奨を受け、各教育委員会が生成AIの活用方法を模索していますが、大人向けのサービスをそのまま子どもに使うことは機能面や安全面で現実的ではありません。また、特定ベンダーのアプリ導入には高額な費用と、急速なAI技術の変化に対応するための研修制度整備が必要という課題があります。本研究開発が提供しようとするサービスは、主に以下の2点です。
 1, 概念型授業導入をサポートする授業用ウェブアプリとその活用研修:連携先の松山市教育委員会と共同で試作・運用を進めます。
 2. 教育委員会におけるウェブアプリの 内製 体制構築支援:教職員のスキルや役割に応じた体系的な研修プログラムをプロトタイピングします。
 この独自価値は、安価なBaaS(Backend as a Service)や生成AIエンジン(Gemini、Firebase等)を活用しつつ、愛媛大学が松山市教育委員会と先進的に進める概念型探究という次世代型教育手法の実践ノウハウ、および教員研修に関する高い質の連携体制によって支えられています。

【4つの「シーズ」が支える革新性
 プロジェクトの基盤となる愛媛大学の研究グループのノウハウは、以下の4つの「シーズ」としてまとめられています。

  • 生成AIBaaSを活用したアプリケーション開発力:最新技術をキャッチアップし、現実の課題解決に援用してきたノウハウを有します。
  • 概念型探究の枠組みに沿ったカリキュラム及び授業開発力:国際バカロレア準拠の学習法を、日本の学校教育制度の中で展開する国内唯一の組織的な取り組みを進めています。
  • 教員研修に関するノウハウ:愛媛大学教育学部と隣接する松山市教育研修センターとの密接な協力体制という、世界的に見ても稀有な環境があります。
  • オープンバッジに関するノウハウ:OpenBadge3.0という新しい規格に関する深い知見を持ち、学内外の連携組織(データサイエンスセンター、オープンバッジ・ネットワーク理事、インフォザイン社など)を通じて最新情報を活かせる環境にあります。

【 3つのレベル別研修とオープンバッジ活用
 本研究で最も重要な要素の一つが、教職員に求められる生成AI関連の知識・技術を習得するための「体系的な研修」です。研修は、アプリ内製の役割に応じて以下の3つのレベルに分けて準備され、学習成果はオープンバッジとして可視化されます。

  学習者レベル    対象者     役割/習得内容
開発ユーザーレベル教育委員会やICT指導的教職員アプリ内製のコアプロセスを担うための知識・技術
アクティブユーザーレベル各学校の連携教職員アプリ利用中の改善提案や簡単な仕様変更のための知識・技術
ユーザーレベルアプリ利用者である教職員内製ウェブアプリ等を授業等で活用するために必要な知識・技術

 研修スタイルは、動画資料等を参照するマテリアル研修、ウェブアプリで実際に手を動かすインタラクティブ研修、少人数でのハンズオン型ワークショップ研修の3つを組み合わせることで、効率と効果の最大化を目指します。特に、研修には概念型探究の枠組みが援用され、学習者が特徴を見出して概念化したり、理解した内容を言語化したりする学び方を促進します。

【密な連携体制がもたらす優位性
 本研究の圧倒的な優位性は、地域の教育委員会との密な連携が既に確立されていることにあります。松山市教育委員会をメインパートナーとし、松山市教育研修センターと共同でアプリ試作や研修プログラムのプロトタイピングを進めます。
 学内では、教育学部を中心に、大学院地域レジリエンス学環、データサイエンスセンターとも連携。学外では、オープンバッジの専門家である明治大学の阪井和男名誉教授、人間環境大学の深澤良彰教授や、国内代理店である株式会社インフォザイン、教員免許状のデジタル化に取り組むデジタル認証サービス機構(DCSP)など、多岐にわたる組織・人材とのネットワークが構築されています。

【 スタートアップ設立に向けたロードマップ
 研究開発実施期間の終了後、令和9年度中頃のスタートアップ設立を予定しています。設立される企業は、公共性の高い社会課題を担う教育コンサルティング企業として、M&Aによる売却を目指す方針です。
 2025年度は開発ワーキンググループの立ち上げとパートナー企業の選定、松山市教育委員会と連携したアプリ内製事例5例以上の開発・運用に取り組み、2026年度は内製アプリのブラッシュアップ体制の確立と、3層を想定した研修プログラムのためのコンテンツ開発を進める計画です。