コロナ禍の現在、「プラスチックごみ」のリサイクルが危機的状況に陥っています。
処理施設の倉庫はプラスチックが山積みになり、リサイクルが滞る事態になっている上に、有害廃棄物の海外輸出規制が強化され、産廃プラスチックも行き場をなくしつつあります。コロナ禍をきっかけに明らかになった脆い日本のリサイクルシステムの解決に向けて、企業や消費者にいまどんな取り組みが求められているのでしょうか。
日本では、持続可能な社会をつくるためプラスチックをごみにせず、資源として循環させることが、今取り組まなければならない課題です。
しかし今、コロナ禍がその循環を困難にしていることが明らかになっています。
コロナ禍でなぜ?滞るリサイクル
自治体から家庭ごみを受け入れ、リサイクルしている企業では、運ばれてくるプラスチックは、1年前に比べ、1割以上増えているといいます。
家庭ごみにはレジ袋や食品の包装トレーなど、さまざまな種類のプラスチックが含まれています。そのため、色合いが単調で強度にも課題があり、再生して作ることができる製品は限られています。
リサイクルに課題 企業から出るプラごみも・・・
家庭から出るプラスチックごみのリサイクルがうまく回っていないことがわかりましたが、実は企業から出るごみのリサイクルも課題に直面しています。
まず、そもそも日本で1年間に排出されるプラスチックごみのうち、およそ半分を占めるのが、家庭などから出る一般廃棄物のプラスチックごみです。そして残りの半分は、工場やオフィスから出る産業廃棄物のプラスチックです。産業廃棄物のプラスチックは、大量に同じ種類のプラスチックを集めることができることなどから、再利用しやすいのが特徴で、様々な製品にリサイクルされています。ところが、この産廃プラスチックのリサイクルも思うように進んでいない実態があります。
コロナ禍で“リサイクル離れ”が
メーカーの工場から出る、資材などを受け入れてきた業者では、リサイクルした再生プラスチックを販売してきました。しかし、コロナ禍で経済が停滞したことなどによる『原油安』の影響を受け、石油から作られる新品のプラスチック素材・バージン材の価格も下落しました。その結果、割安となったバージン材を利用するメーカーが増え、再生プラスチックの販売量は激減しています。
このような原油安によるリサイクル離れは、経済情勢が変化するたびに起きているといいます。リサイクル材に価格以外の価値を見いださないと、これからもこのような事態が起こると予想されます。
輸出規制で国内循環を目指すも・・・
産廃プラスチックは国内だけでなく、海外に輸出されリサイクルされるものがありますが、汚れたプラスチックは環境汚染を引き起こしているとして、有害廃棄物の輸出入を規制する条約が改正されました。これにより、リサイクルに適さないプラスチックが新たに規制の対象になり輸出はできなくなったものの、リサイクルで利益を出すのは難しいと判断し、不正な輸出をしている企業が存在する現実があります。
こうした問題に、国はどう対応するのか。輸出の監視を強化するとともに、国内のリサイクルシステムそのものも改善していくとしています。
資源循環へ
プラスチック資源の循環実現を目指す、新たな取り組みも始まっています。日用品メーカーの、花王です。目指しているのは、シャンプーなどの詰め替え容器に大量に使っているプラスチックのリサイクルです。
詰め替え容器を自社で回収して100%リサイクルし、同じ詰め替え容器に再利用する新たな循環の仕組みです。様々な課題に直面しながらも使用済みの詰め替え容器を再利用するための、独自の技術を開発し、破れにくい素材を作ろうとしているのです。すでに試作品は完成していて、2023年の実用化を目指しています。