18歳が発見！水中のマイクロプラスチックを集める方法とは？

アイルランド人のティーンが水中からマイクロプラスチックを除去する方法を考案し、Googleのグローバル・サイエンス・コンテストで優勝！

歯磨き粉や洗顔剤などを使っていると、何となくザラザラした感触がすることはありませんか？ 実は、そのザラザラ感は、製品中に含まれるマイクロプラスチックに由来するもの。ペースト状の衛生用品に使用されがちな…

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　歯みがき粉こや洗顔料せんがんりょう（顔を洗あらうためのもの）などを使っていると、何となくザラザラすると思うことはありませんか？実は、そのザラザラ感は、製品せいひんに入っているマイクロプラスチックによるものです。ペースト状じょうの衛生えいせい用品（身体のよごれを落としたり、きれいな状態じょうたいを保たもったりするための商品）に使われがちなマイクロプラスチックは、家庭の排水口はいすいこうから川へ流れこんで、やがて海に行き着いて海洋生態系せいたいけいに影響えいきょうをあたえます。最後さいごには、マイクロプラスチックをためこんだ魚介類ぎょかいるいを食べる人間の健康けんこうにも関かかわってきます。

　しかし今のところ、多くの時間やお金をかけずに水中のマイクロプラスチックを取り除のぞく技術ぎじゅつは開発されていません。そんな状況じょうきょうを打ち破やぶるように新しい方法ほうほうを発見したのが、18歳さいのアイルランド人フィオン・フェレイラさんです。フェレイラさんはこの発見により、Googleぐーぐるサイエンス・フェア2019のグローバル・サイエンス・コンテストで優勝ゆうしょうしました。この18歳さいの天才の発見とは、どのようなものなのでしょうか？

きっかけは学校の授業じゅぎょう

　マイクロプラスチックが環境かんきょうにあたえる問題について知ってから、フェレイラさんは様々な論文ろんぶんを読んで解決策かいけつさくを探さぐっていました。そんなある日、フェレイラさんは学校の化学の授業じゅぎょうで、同じ静電気せいでんきの量りょうを持つ物体同士どうしが引き寄よせられるということを学び、ピンと来ます。植物油は、水中でマイクロプラスチックを引き付けるのではないか、と。すばらしいひらめき力ですね。

　さらに研究を進めたフェレイラさんは、「マグネタイト粉末ふんまつを使ってこぼれた油を掃除する手法」という論文ろんぶんを読み、またしてもひらめきます。植物油とプラスチックは引っ付く。植物油とマグネタイト粉末ふんまつも同じ。つまり、油とマグネタイト粉末ふんまつが混まざったものにマイクロプラスチックを引き付けさせ、最終的さいしゅうてきにはマグネタイトを磁石じしゃくに引っ付けて集めれば、環境かんきょうに優やさしいのではないだろうか？

やりとげた実験じっけんと分析ぶんせき

　フェレイラさんはこの予想を確たしかめる実験を行うことにしました。

【実験じっけんの手順てじゅん】

1．紙やすりでプラスチック製品せいひんをけずってマイクロプラスチックを作り、試験管しけんかんに入れた20mlの水に混まぜる。

2．植物油とマグネタイト粉末ふんまつを用意する。水1Lに対する油の量りょうは0ml、2.5ml、7.5ml、12.5mlの4パターンとし、マグネタイト粉末ふんまつは20mlに0.5gの濃こさにする。

3．植物油とマグネタイト粉末ふんまつを1に入れ、20回上下にふる。

4．試験管しけんかんに磁石じしゃくを入れてマグネタイト粉末ふんまつを集める。

5．集めたものを使って、マイクロプラスチックをどれだけ集められたかを2つの方法ほうほうで分析ぶんせきする。



【分析ぶんせきの方法ほうほう】

（1）光を通したときに、物によってどれだけ光を通すかが変かわるというしくみを使って、どれだけのマイクロプラスチックを集められたかを調べる。

（2）まずシャーレに実験じっけん前と実験じっけん後の水をぬって、デジタル顕微鏡けんびきょうで写真を撮とる。そして、写真を区切って、その中にあるマイクロプラスチックの数を調べる。

この発見はマイクロプラスチックを取り除のぞく救すくいとなるか？

　こうして手に入れたデータをまとめたところ、思いがけない結果けっかが出ました。（1）の方法ほうほうでは平均へいきん96.42%、（2）の方法ほうほうでは99.66%ものマイクロプラスチックを集めることができました。この数字は12.5mlの植物油を入れたときのもので、油の量が少なくなるとマイクロプラスチックを集める量りょうも減へるようです。

　またフェレイラさんは、洗濯機せんたくきのフィルターから出るプラスチック繊維せんい（細い糸のようなもの）はだいたい95%取り除のぞかれているということに注目し、今回使った方法ほうほうが都市部の浄水機構じょうすいきこう（水をきれいにするしくみ）で役に立つのではないか、と言っています。というのも、排水はいすい（生活の中で出る水）の中のプラスチックの55%以上が洗濯機せんたくきと洋服から出るためです。

　今はまだ小さい規模きぼの実験じっけんでの成功せいこうだけなので、これからは実際じっさいに使っていけるようにするために、マグネタイトの量りょうや磁石じしゃくの種類しゅるい、引っ付けたものを集める方法ほうほうなどの研究を進めていく必要ひつようがあるとされています。