リサイクルなどを行うことで、新しい資源をあまり使わないようにすることを目指した社会(循環型社会)のために、いろいろな会社がエコな方法でお金も儲けられるよう急いで準備スタート!
使用したプラスチックをもう一度使えるようにしようとする技術の開発が進んでいます。積水化学工業と住友化学いう会社は、プラスチックごみともえるごみから新しくプラスチックを作り出す技術を開発しました。ほかにもサントリーホールディングスや東洋紡など12個の会社は、プラスチックごみの再利用(リユース)を目指した新しい会社を作りました。
分別をしなくても大丈夫!?
積水化学工業と住友化学は、プラスチックごみがもえるごみの中に混ざっていても、レジ袋のもとになる汎用樹脂※1やエタノール※2が作れる技術を開発しました。具体的には、積水化学工業がごみからエタノールを生産します。そして次にそのエタノールを住友化学に渡し、エタノールからレジ袋のもとになる樹脂(ポリオレフィン)に作り変えます。ごみからエタノールを生産するという積水化学工業の技術は、アメリカの会社と一緒に協力して開発したもので、ごみの分別がいらなくなったり、エタノールの生産も地球に優しい方法がとられています。
積水化学工業は、以前から埼玉県寄居町の試験用の工場で年間20キロリットルのエタノールを生産してきました。住友化学と一緒に新しい技術を開発することが決まったことに合わせて、政府も参加している会社INCJと同じ目標に向かって会社を設立。90億から100億円をかけて、さらに大きな試験用の工場を岩手県久慈市に建設する計画です。
となりにあるごみ処理施設から1日あたり約20トンのもえるごみをもらい、1年間で数百リットルのエタノールを生産する計画です。生産されたエタノールは千葉県市原市にある住友化学の千葉工場に運ばれます。2021年3月ごろに生産を始めて、2025年4月からは継続して生産を続けていくことを目指しています。
日本の石油化学コンビナート※3で製造されるエチレン※4は、二酸化炭素を多く排出するガソリンが原料となっています。しかし積水化学工業と住友化学の技術が広く伝われば、二酸化炭素を減らせる上、人が作り出すことのできない天然資源の節約にもつながります。積水化学工業はエタノールを他の会社にも売ったり、自治体などにこのエコな技術を使ってもらえるようお願いし、将来的にはエコな方法でお金をたくさん稼ぎたいと考えています。
たくさんの種類をまとめて処理!
サントリーホールディングスや東洋紡など12の会社は、新しい会社を設立しました。2027年までにペットボトルやレジ袋、食品トレーなどのプラスチックごみを、直接原料に戻す取り組みを始めます。
新しい会社「アールプラスジャパン」には、大日本印刷や東洋製缶グループホールディングス、アサヒグループホールディングスなども会社の成長に期待してお金を出しています。また住友化学も参加するか考えています。
新しい会社「アールプラスジャパン」は、アメリカのバイオベンチャー※5のアネロックの成長に期待してお金を出しています。アネロックは、さまざまな種類のプラスチックごみをまとめて処理できる技術を開発中で、すでにある技術に比べて、簡単にできるという良い面があります。2020年6月30日に記者会見をしたサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、「(新しい会社は)使用済みプラのリサイクルで技術の芽を育み、花を咲かせる」と強調しました。
日本では年間約900万トンのプラスチックごみが処理されており、リサイクル率は約85%に達しています。しかし、その多くはもやして、その熱を利用する「サーマルリサイクル」で。もやす時に二酸化炭素を排出することから、国際的にはリサイクルとは認められていません。プラスチックの使用削減や代わりの素材開発とともに、ケミカルリサイクル※6によってプラスチックごみを再び資源として利用することができて初めて環境先進国と言えるだけに、サントリーホールディングスの新浪社長は「これまでにない新しい技術を広く発展させ、新しい課題解決の方法を示していきたい」と意気込んでいます。
※1汎用樹脂:私たちが日常的に使う家庭用品、雑貨、包装材料などで使われているプラスチック。
※2エタノール:様々なアルコールの中の1つ。燃えると二酸化炭素と水になる。
※3石油化学コンビナート:石油を使った製品を作っている工場や会社が集まっている地域。
※4エチレン:レジ袋などの材料である、ポリエチレンの原料。
※5バイオベンチャー:生物の知識と技術を組み合わせて活動している会社。
※6ケミカルリサイクル:使用済みの資源を、そのまま捨てるのではなく、リサイクルすること。