農業におけるエネルギー消費は、大きく2つに分けることができます。1つは、農業生産現場で直接燃料や電力を使用することで消費される直接消費です。もう1つは、資材や機材を買って利用することによって、それを製造するために必要なエネルギーを消費したとみなす間接消費です。直接消費としては、トラクター、収穫機、乾燥機などの燃料、家畜小屋や温室の冷暖房、照明などが代表的です。一方、間接消費としては、肥料、農薬、農業機械、ビニール資材、育苗ポットなど、製造から輸送までを考える必要があります。なお、かんがい排水については、ポンプ場を農業現場とみなせば、その運転に必要な電力は直接消費で、ポンプ場を建設するための資材や燃料が間接消費となります。しかし、水を生産資材と考えれば、それを使うために必要なエネルギーは間接的なものと見ることもできます。
(1)農業現場での直接消費
上の図は、各分野での直接エネルギー消費をエネルギーの種類ごとに整理したものです。ここではお米は穀類にふくまれます。この図を見ると、「施設野菜」「花きの施設園芸」での重油の消費が大きくつき出していることがわかります。下の図を参照すると、これらは穀類等に比べて作付面積は大きくはありませんが、農業産出額(農業粗生産額)にしめる割合が高く、産業として重要な分野であるといえます。一方、エネルギー(カロリー)に注目した食料供給や、農地利用という観点から見れば、穀類・イモ類が重要な分野といえます。
特に穀類生産には、農業サービスにふくまれるかんがい排水や、カントリーエレベータなどでの穀類の乾燥にエネルギーが必要であり、これらを主要食料生産のための直接エネルギーと考えることができます。穀類の生産現場では、農業機械の燃料となる軽油と収穫物乾燥用の灯油の消費が大きくなっています。ガソリンは、小型の田植機や草刈り機などに一部使われています。また、かんがい排水と穀類乾燥が中心の「農業サービス」においても、電力と灯油が大きな割合となっています。(農家がそれぞれ行う収穫物の乾燥調整やかんがい排水用ポンプの運転のためのエネルギーは「穀類」に入ります。)
(2)資材を取り入れることによる間接消費
間接的なエネルギー消費には、その資材や機材の生産に必要な原材料など、全てのエネルギーがふくまれます。リン酸とカリ肥料については、製造エネルギーそのものよりも、むしろ完全に輸入にたよっている鉱石原料の確保や輸送が重要です。そのため、ここでは大きな製造エネルギーが必要な窒素肥料についてのみ考えます。窒素肥料を化学的に合成するためには、窒素と水素が必要です。そのうち、窒素は空気から手に入れることができますが、水素は原油、天然ガス、石炭などの化石燃料から作られています。食用米の生産で窒素肥料を使うことで消費されたと考えられる間接エネルギーは、直接エネルギーの4分の1から半分ほどです。豆類やそばを除けば、畑作物に窒素肥料を使う量は水稲より多く、間接的なエネルギーはもっと多くなります。