今、世界で戦争が起こっていることを知っていますか?2022年2月、ロシアがウクライナに攻めこみ、11月の今でも戦争が続いています。ウクライナが、アメリカとヨーロッパのたくさんの国が入っているグループに入ろうとしたので、ロシアは自分たちが攻められるかもしれないと思い、戦争を起こしました。このグループは長い間ロシアの敵と考えられてきたので、ロシアは信じることができないのです。今ロシアがある地域には、昔からくり返し他の国が攻めてきていて、たくさん人が亡くなったこともあります。そのため、ロシアは今も他の国から攻められることをとてもこわがっています。
戦争が長くなることで心配になるのは、ロシアから輸入している小麦などの穀物が入ってこなくなることだけではありません。広大な国土をもつロシアは、3大肥料原料であるリン酸、カリ(加里と書くこともある)、窒素の生産でとても重要な役割を果たしています。豊富な天然ガスや石油などのエネルギーを使って、アンモニアなどの窒素肥料原料も合成しています。カリ鉱石の生産量の3割強はロシア、ベラルーシがしめ、ロシアはリン鉱石の生産が世界第4位になっています。
しかし、そのエネルギーや人手が戦争に使われるなどして、世界最大であるロシアからの供給がなくなれば、世界の農業にとって致命的な影響を受けることになります。効率化した大規模な近代農業では、化学肥料を使うことができなければ、減収はさけられないからです。農業大国ブラジルでは、2021年には肥料の85%を海外から輸入していて、その内23%がロシアからのものです。ブラジルの大統領は、今後肥料の調達が難しくなるとして、アマゾンなどでの資源開発をできるようにする法整備を進めようとしています。肥料の主要成分であるカリウムを採取することがねらいです。さらに、ヨーロッパの国々が入っている欧州連合(EU)の農業は、農薬の大半をロシアからの輸入にたよっているといいます。インドは、全体の肥料消費量や面積に対する消費量も多いことから、化学肥料が入手しにくくなった場合の影響はとても大きいでしょう。
化学肥料原料のほぼ全量を輸入にたよっている日本も心配です。日本は、全体の化学肥料の消費量はそこまで多くありませんが、ヘクタールあたりの消費量は268キロで、中国に次いで世界第2位です。特に、リン酸アンモニウム、塩化カリウムはほぼ全量を輸入しています。農林水産省によれば、資源が特定の地域にだけ多くあるので、輸入相手国もカナダ、中国、ロシア、ベラルーシなどにかたよっています。戦争が長く続けば、日本の農業にも大きな影響が出てくるかもしれないのです。