自動車の排出ガスと地球温暖化

 わたしたちの生活に重要な移動手段しゅだんとして、自動車は欠かせません。一方で自動車の排出はいしゅつガスは、大気汚染おせんを引き起こすなど、大きな環境かんきょう問題にもつながっています。また、自動車の排出ガスには、地球温暖化おんだんか原因げんいんである温室効果こうかガスの1つ、二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)が大量にふくまれていて、近年その影響えいきょうについても話題となっています。

 自動車の排出ガスが環境にどのような影響をあたえ、排出ガスをらすために、国や自動車工業はどんな取り組みを開始しているのでしょうか。この記事では、さまざまな角度から自動車の排出ガスの環境問題を解説かいせつしていきます。

自動車の排出ガスの何が問題?地球温暖化への影響

自動車の排出ガスによる大気汚染

 自動車の燃料ねんりょうはガソリンや軽油です。これらを燃やしてエネルギーにするときに排出されるガスには、一酸化炭素いっさんかたんそ窒素ちっそ化合物、粒子状りゅうしじょう物質、二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)などの多くの化学物質がふくまれています。この化学物質は、大気中で人間や生物に害のある物質に変化し、酸性雨さんせいうや光化学スモッグなどの大気汚染を引き起こしてきました。

 また、大気汚染は人体だけではなく、森林や農業などにも悪影響をあたえています。

自動車の排出ガスは温室効果ガスを大量に排出

 温室効果ガスとは、大気中に存在して、地球の表面から放射される赤外線の一部を吸収することで温室効果をもたらす、二酸化炭素やメタン、フロンなどのガスのことを指します。自動車の排出ガスはCO2も大量に排出するため、地球温暖化の要因の1つとして問題になっています。

CO2排出と地球温暖化の関係

 人間の経済活動は、常に石油や石炭などの化石エネルギーを消費し、大量のCO2を発生させてきました。このまま温室効果ガスがえ続けると、地球の温度は約1.5度上がると言われています。持続可能かのうな社会をきずくためにも、脱炭素だつたんそを進めていき、これ以上気温が上がるのを止めなくてはいけません。

運輸うんゆ部門におけるCO2排出量と移り変わり

 日本のCO2排出量を、部門別に見てみましょう。自動車は、電車や船と同じように、人や貨物を運ぶ「運輸」という部門にあたります。2019年度は、運輸部門のCO2排出量は2億600万トンでした。総排出量は11億800万トンなので、これは全体の18.6%をめることとなります。経済が発達するにつれ、自家用車をもつ人も増えたため、自家用車のCO2排出量は運輸部門の45.9%を占めました。

 1990年度から1996年度まで運輸部門のCO2排出量は、約23%も増えていました。しかし、1997年に、日本はCO2排出量を1990年度の基準から6%減らすことを決め、それを達成しました。2001年度以降、CO2排出量は、少しずつではありますが少なくなっています。

自動車の排出ガスを減らすための取り組み

エコドライブから進化「ゼロカーボン・ドライブ」

 自動車の排出ガスによる環境問題対策として、エコドライブがすすめられました。エコドライブとは、むだに速度を出したりブレーキをふんだりせずに運転する、エアコンを適切てきせつに使う、いらない荷物を積まないというような、環境にやさしい自動車の運転のしかたのことです。

 エコドライブをすすめることで、社会では自動車の排出ガスを減らす意識が少しずつ定着しました。さらに、近年はCO2自体の排出量をゼロにする「ゼロカーボン・ドライブ」という政策せいさくにより、自動車の脱炭素化が進められています。

新たな移動の選択せんたく循環型経済じゅんかんがたけいざいとは

 循環型経済じゅんかんがたけいざいというのは、これまで捨てられていた製品や原材料なども「資源」と考え、それらを再活用して資源を循環させるという経済システムです。今までも行われていたリサイクルなどに加えて、使う資源の量や捨てる資源の量も減らすことを目指しています。その中では、「ゼロカーボン・ドライブ」で脱炭素をすすめると同時に、「所有(もつ)からシェア(共有する)」という考えを広めようとしています。たとえば、ふだん自治体や民間企業きぎょうが使っている車を、休日には市民が移動するために利用してもらうというのがそのひとつです。

 車は1人1台所有するのではなく、利用したいときに共有することで、エネルギーの節約やむだをなくすことができます。さらに、業界や消費者との、新たな循環型のつながりをつくることができます。

再生可能さいせいかのうエネルギーは自動車の排出ガスを減らすためにも活躍かつやく

再エネ×電気自動車の推進すいしん

 「ゼロカーボン・ドライブ」では、自動車の脱炭素を進めるために、再生可能エネルギー(再エネ)普及ふきゅうをすすめています。電気自動車やプラグインハイブリッド車、燃料電池自動車などの電動自動車を再エネで活用して、自動車が走るときのCO2排出をゼロにするという取り組みです。

 太陽光や風力を使用する再エネは、CO2を排出しません。再エネを使った電気自動車は、排出ガスのCO2を減らすための大きな力になります。

出典:環境省「大気環境・自動車対策 ゼロカーボン・ドライブ(ゼロドラ)」(2020)

自動車の排出ガスを減らすためのエコカー開発

エコカーとは何か

 自動車の脱炭素を実現じつげんするために、エコカーの開発も活発になっています。エコカーとは「エコロジーカー(自然環境保全車)」をりゃくしたもので、環境に配慮はいりょした自動車のことです。電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車など、さまざまな種類のものがあります。

世界で加速するエコカー開発

 近年、中国をはじめとする経済大国が電気自動車の開発生産に力を入れています。ヨーロッパも脱炭素に向け、競うように電気自動車の開発へ取り組んでいます。電気自動車だけでなく、脱炭素や環境に配慮したエコカーの開発は、世界各国で進められています。どのようなエコカーが開発されるにしろ、化石エネルギーを使ってCO2を排出する自動車は、今後急速に減ることはまちがいありません。

まとめ:自動車の排出ガスによる環境問題を知ることは企業の責任

 自動車は、生活に欠かせないものであるからこそ、排出ガスの環境問題に対して無関心ではいけません。現在、CO2を排出しない再エネ利用の電気自動車の開発やカーシェアリングなど、自動車工業は、脱炭素に向けて新たな動きを始めています。企業は、世界の環境問題に対して敏感びんかんになり、環境価値かちを高める行動を起こすことが必要です。

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