参考資料:https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2021.pdf
わたしたちはふだん当たり前のようにエネルギーを使って生活しています。もしもエネルギーが使えなくなれば、生活を続けていくことすらできなくなるでしょう。エネルギー問題は決して他人事ではなく、地球で生活していくためには、個人でもエネルギー問題に向き合っていく必要があります。
世界におけるエネルギー問題
エネルギーは世界のどの国でも必要で、エネルギー問題は地球規模で考えていかないといけません。まずは世界におけるエネルギー問題について見ていきましょう。
1.化石燃料などの資源がつきてなくなってしまう
化石燃料とは、天然ガス、石炭、石油など、植物や動物の死がいが長い年月をかけて変化することでできた燃料のことです。火力発電所では、化石燃料を燃やすことでできるエネルギーを利用して発電しています。化石燃料は自然から手に入れられるもので、人工的に作られた物ではありません。そのため、使い続ければいずれはつきてなくなってしまいます。現在、石油や天然ガスは約50年、石炭は約140年でなくなると予測されていて、遠くない未来に化石燃料は使えなくなるかもしれません。世界的に見ても、石炭による発電は全体の約3分の1を占めているため、このままの状態で化石燃料がなくなると、世界的にエネルギー不足になります。電気が止まれば経済も止まるため、人類にとって大きな問題となります。
2.消費エネルギーが増加している
消費エネルギーは世界的に年々増加していて、このまま消費量が増えていけば、世界のエネルギー消費量が2040年には2014年の1.3倍に増加すると予測されています。すでに2018年のエネルギー消費量は1965年のほぼ3倍となっていますが、さらにエネルギー消費量が増えると予測されています。先ほどもあったように、化石燃料はいずれなくなってしまうため、このままずっとエネルギーを使っていくわけにはいきません。しかし、エネルギー消費は経済的な発達のためには必要です。中国やインドなどの新興国は、今後もエネルギー消費が必要となるため、日本やアメリカなどの先進国は消費エネルギー量をおさえるように協力しなければなりません。
3.CO2排出量の増加による地球温暖化
水蒸気、CO2、メタンなどの温室効果ガスは、地面から出ている赤外線を吸収し、放出する特徴があります。地球は、大気中に温室効果ガスがあるため、平均気温が14℃と人間が住みやすいような気温になっています。もし地球に温室効果ガスがなければ、地球の表面温度は-19℃と今とはまったくちがう環境となっていたでしょう。しかし、現在CO2排出量は年々増え続け、これによって地球の平均地上温度が上がっています。海水温が上がって氷河がとけることによって水位が上がり、地表の面積が減少すると予測されています。化石燃料を燃やすとCO2が発生するので、これ以上CO2を増やさないようにエネルギー消費をおさえることが重要です。
日本が直面するエネルギー問題
世界的に見ても、エネルギー問題は人類にとって大きな課題であることを説明しました。それに加えて、日本が独自にかかえているエネルギー問題があります。いったい日本にはどのようなエネルギー問題があるのでしょうか?
1.エネルギー自給率が低い
エネルギー自給率とは、自国で一次エネルギーをどのくらい確保できているのかを示すものです。一次エネルギーとは、石炭や石油、原子力、太陽光など、エネルギーをつくりだすもととなる資源のことをいいます。この自給率が高ければ、他の国の影響を受けずに安定して発電することができます。経済産業省の資源エネルギー庁の調査によると、日本のエネルギー自給率は12.1%で、世界35位という結果になりました。世界の先進国と比べるとかなり低く、電力において日本は他の国にたよっている状況です。そのため、他の国で戦争などが起これば、エネルギーを安定して提供できなくなったり、 電気代が急に高くなってしまったりする可能性があります。
2.再生可能エネルギーの発電にかかる費用が高い
再生可能エネルギーは化石燃料を使わないため、資源がなくなることや地球温暖化などの問題を解決することができます。しかし、日本は世界と比べて働く人をやとうための費用や物の値段が高く、さらに山地が多いので再生可能エネルギーのための施設が作りにくくなっています。そのため、他の国よりもどうしても発電にかかる費用は高くなります。発電にかかる費用が高ければ、国民の負担も重くなり、再生可能エネルギーの利用はなかなか進みません。実際に、太陽光発電は世界よりも7.7円、風力発電は8.1円ほど高く、資源エネルギー庁でも問題だとされています。
3.石油などの化石燃料にたよっている
先ほども説明したとおり、日本では再生可能エネルギーの導入がなかなか進まない状態です。2020年における日本の一次エネルギーの国内供給は以下の表のとおりです。
石油 | 36.4% |
---|---|
石炭 | 24.6% |
天然ガス | 23.8% |
原子力 | 1.8% |
水力 | 3.7% |
水力以外の再生可能エネルギーなど | 9.7% |
このように、石油、石炭、天然ガスの化石燃料の合計が80%をこえています。化石燃料にたよる割合は年々下がってはいますが、いまだに国内で使われているエネルギーの多くは化石燃料であり、地球温暖化や燃料がなくなるなどの課題を解決できていません。
4.地震が多く原子力発電所に不安がある
日本のまわりには地震を引き起こすプレートというものが4つもあります。世界の国々よりも地震の数が多く、建物がこわれるほどの大きな地震が起こる可能性も高い状態です。そのため、日本の原子力発電所では、地震や津波に対する対策をしています。しかし、2011年に起きた東日本大震災では、津波により東京電力福島第一原子力発電所で事故が起こりました。この事故をきっかけに、原子力発電所の安全について見直され、まだ動かせていない原子力発電所も多くあります。原子力発電は化石燃料の割合を減らすために役立ちますが、地震の多い日本では不安も多いというのが現実です。
日本のエネルギー問題対策に向けての取組
エネルギーに関して、さまざまな問題や課題をもつ日本ですが、解決に向けて以下のような取組を行っています。
1.再生可能エネルギーを広める
日本のエネルギー自給率の低さ、化石燃料にたよる割合の高さを解決するために、再生可能エネルギーを広める取組が行われています。太陽光発電では、公共施設で積極的に取り入れたり、民間企業や住宅でも導入が進むように補助金が出されたりしています。風力発電機も年々増えており、孤島や海岸近くなどの強風が吹く場所に設置が進んでいます。
2.原子力発電にたよりすぎないようにする
東日本大震災が起こるまでは、日本の発電量の約3割は原子力発電所によるものでした。しかし、地震や津波などが起きたときに、周囲の安全を確保できるかわからないので、原子力発電所の発電にたよりすぎないようにすることも目標です。現在は、高い基準をクリアした原子力発電所だけが動いています。今後も原子力発電所にたよらないようにするべきだとされており、2030年で2割ほどにすることを目指しています。2022年6月現在で、再び動いている原子力発電所もありますが、どんどん少なくなっていて、原子力発電所にたよらない方向に進んでいます。
3.省エネルギーを進める
CO2排出量を減らすためにも、原子力発電所にたよらないようにするためにも、なるべく電気を使わないようにする省エネルギー(省エネ)が重要です。政府は、省エネ住宅に対して補助金を出したり、住宅にかかる税金を減らしたりしています。民間住宅が省エネ住宅となっていけば、エネルギー消費量も減っていき、エネルギー不足解決につながるでしょう。また、企業や公的施設においては、災害や事故が起きてもなるべくいつも通りに運用できるようにするためにも、省エネが求められています。いつもは世界的に求められている省エネ、節電でなるべく電力を使わないようにし、非常時には施設内でエネルギーを確保することが必要となります。
個人でもエネルギー問題へ取り組む
省エネは国や地域で行うだけではありません。1人ひとりの心がけもエネルギー問題解決に向けて必要です。身のまわりだけではなく地球規模で起きている問題にも目を向け、より省エネの必要性を知るとよいでしょう。個人でエネルギー問題に取り組むためには、電力を使わないようにする節電が1番です。ささいなことではありますが、1人ひとりが節電を心がければ、大きな省エネにつながります。