農業でのエネルギー消費

 農業におけるエネルギー消費は、大きく2つに分けることができます。1つは、農業生産現場げんば直接ちょくせつ燃料ねんりょうや電力を使用することで消費される直接ちょくせつ消費です。もう1つは、資材しざい機材きざいを買って利用することによって、それを製造せいぞうするために必要なエネルギーを消費したとみなす間接かんせつ消費です。直接ちょくせつ消費としては、トラクター、収穫機しゅうかくき乾燥機かんそうきなどの燃料ねんりょう家畜かちく小屋や温室の冷暖房れいだんぼう、照明などが代表的です。一方、間接かんせつ消費としては、肥料ひりょう、農薬、農業機械きかい、ビニール資材しざい育苗いくびょうポットなど、製造せいぞうから輸送ゆそうまでを考える必要があります。なお、かんがい排水はいすいについては、ポンプ場を農業現場げんばとみなせば、その運転に必要な電力は直接ちょくせつ消費で、ポンプ場を建設けんせつするための資材しざい燃料ねんりょう間接かんせつ消費となります。しかし、水を生産資材しざいと考えれば、それを使うために必要なエネルギーは間接かんせつ的なものと見ることもできます。

(1)農業現場げんばでの直接ちょくせつ消費

農業分野別直接ちょくせつエネルギー消費と燃料ねんりょう種の内訳うちわけ
産業連関表(2005)に基づいて集計

 上の図は、各分野での直接ちょくせつエネルギー消費をエネルギーの種類ごとに整理したものです。ここではお米は穀類こくるいにふくまれます。この図を見ると、「施設しせつ野菜」「花きの施設しせつ園芸」での重油の消費が大きくつき出していることがわかります。下の図を参照すると、これらは穀類こくるい等に比べて作付面積は大きくはありませんが、農業産出がく(農業生産がく)にしめる割合わりあいが高く、産業として重要な分野であるといえます。一方、エネルギー(カロリー)に注目した食料供給きょうきゅうや、農地利用という観点から見れば、穀類こくるい・イモ類が重要な分野といえます。

作付面積の構成こうせい(単位:ha)
農林水産省 2005年度作物統計


農業生産がく構成こうせい(単位:百万円)
農林水産省 2005年度生産農業所得統計

 特に穀類こくるい生産には、農業サービスにふくまれるかんがい排水はいすいや、カントリーエレベータなどでの穀類こくるい乾燥かんそうにエネルギーが必要であり、これらを主要食料生産のための直接ちょくせつエネルギーと考えることができます。穀類こくるいの生産現場では、農業機械きかい燃料ねんりょうとなる軽油と収穫物乾燥しゅうかくぶつかんそう用の灯油とうゆの消費が大きくなっています。ガソリンは、小型の田植機たうえきや草などに一部使われています。また、かんがい排水はいすい穀類乾燥こくるいかんそうが中心の「農業サービス」においても、電力と灯油とうゆが大きな割合わりあいとなっています。(農家がそれぞれ行う収穫しゅうかく物の乾燥かんそう調整やかんがい排水はいすい用ポンプの運転のためのエネルギーは「穀類こくるい」に入ります。)

(2)資材しざいを取り入れることによる間接かんせつ消費

 間接かんせつ的なエネルギー消費には、その資材しざい機材きざいの生産に必要な原材料など、全てのエネルギーがふくまれます。リンさんとカリ肥料ひりょうについては、製造せいぞうエネルギーそのものよりも、むしろ完全に輸入ゆにゅうにたよっている鉱石こうせき原料の確保かくほ輸送ゆそうが重要です。そのため、ここでは大きな製造せいぞうエネルギーが必要な窒素肥料ちっそひりょうについてのみ考えます。窒素肥料ちっそひりょうを化学的に合成するためには、窒素ちっそ水素すいそが必要です。そのうち、窒素ちっそは空気から手に入れることができますが、水素すいそは原油、天然ガス、石炭などの化石燃料ねんりょうから作られています。食用米の生産で窒素肥料ちっそひちょうを使うことで消費されたと考えられる間接かんせつエネルギーは、直接ちょくせつエネルギーの4分の1から半分ほどです。豆類やそばをのぞけば、畑作物に窒素肥料ちっそひりょうを使う量は水稲すいとうより多く、間接かんせつ的なエネルギーはもっと多くなります。

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