肥料の今後を考えよう

参考：肥料をめぐる情勢（農林水産省）

水稲栽培における栄養素の役割

窒素とカリウムが水稲栽培で最も量が多く必要とされる栄養素です。

止まらぬ肥料価格の高騰に日本は耐えられるのか？

肥料価格の上昇が止まりそうにない。穀物価格やコロナ禍による輸送費の値上がり、中国による環境保護政策の強化などの要素が絡み合うのに加え、ウクライナ侵略による経済制裁が拍車をかける。化学肥料を漫然と撒く過剰施肥を見直す時期に来ている。

肥料ひりょうについて

　窒素ちっそ（N）、リン酸さん（P）、カリウム（加里、カリともいう）（K）は、肥料ひりょうの三要素といわれていて、それぞれ次のような働きがあります。

窒素ちっそ：植物（特に葉）の成長をうながす

リン酸さん：開花・結実をうながす

カリウム：根の発達をうながす

　また、水稲すいとうではそれぞれ次のような働きがあります。

窒素ちっそ：正しく管理することで水稲すいとうの収量しゅうりょうを増ふやすことができる

リン酸さん：分げつ、根の発達、開花をうながす

カリウム：穂ほにつく籾もみの数、成熟せいじゅくした籾もみの割合わりあい、千粒重せんりゅうじゅう（玄米げんまい1000粒つぶ当たりの重さ）を増加する

　窒素ちっそ、リン酸さん、カリウムのほとんどは、化石燃料ねんりょうや鉱物資源こうぶつしげんを化学的に合成してつくる「化学肥料ひりょう」でまかなわれています。

化学肥料ひりょう原料の輸入ゆにゅう相手、輸入ゆにゅう量

　主な化学肥料ひりょうの原料である尿素にょうそ、リン酸さんアンモニウム、塩化カリウムは、ほぼ全部を輸入ゆにゅうしています。世界的に資源しげんがかたよって、決まった場所にだけ多くあるので、輸入ゆにゅう相手もかたよっています。

世界における肥料ひりょうの消費量

　世界における肥料ひりょうの消費量は、年々増ふえてきています。日本の肥料ひりょう消費量は、世界全体の消費量の0.5％となっています。

リン鉱石こうせき、塩化カリウムの採掘さいくつ量と今後採掘さいくつできると考えられる埋蔵まいぞう量

　リン鉱石こうせきは、中国、モロッコ、エジプトの3か国で今後採掘さいくつできると考えられる埋蔵まいぞう量の約8割わり、カリウム鉱石こうせきはカナダ、ベラルーシの2か国で約7割わりをしめています。埋蔵まいぞう量と2021年の採掘さいくつ量から、採とることができると考えられる年数は、リン鉱石こうせきで約320年、カリウム鉱石こうせきで約240年とされています。

止まらない肥料ひりょうの値ね上がり

　化学肥料ひりょうのもととなる資源しげんがつきてなくなってしまうのが、そう遠くない未来であることは、先ほど紹介しょうかいしました。しかし、他にも肥料ひりょうに対する問題が起こっています。肥料ひりょうの値ね上がりが止まりそうにないのです。穀物こくもつの値段ねだんやコロナ禍かによる輸送ゆそう費の値ね上がり、中国による環境保護政策かんきょうほごせいさくの強化などの要素がからみ合い、日本では2021年の夏ごろから肥料ひりょうの値ね上げが続いてきました。肥料ひりょうの三要素の1つである塩化カリは、４分の１をロシアとベラルーシから輸入ゆにゅうしていたので、ウクライナ侵略しんりゃくに対する経済制裁けいざいせいさいにより、さらに値段ねだんが高くなることが予想されます。必要以上の化学肥料ひりょうをまく過剰施肥かじょうせひを、いよいよ見直す時期に来ています。

肥料ひりょう節約の対策たいさくを

　今回の値ね上がりは08年以来としてさわがれていて、この波がいつか収おさまるとしても、また肥料ひりょうの値ね上がりが起こるというのは避さけたいことです。資源しげんは基本きほん的に有限ゆうげんで、人口増加ぞうかと農業の近代化が世界で進む以上、肥料ひりょうの需要じゅよう（人々がほしいと思うこと）は増ふえ続けると考えられます。そうなると、化学肥料ひりょうを節約して、ほかの肥料ひりょうや堆肥たいひに置きかえるという対策たいさくが必要になります。農林水産省は21年5月末に、安い銘柄めいがらへの切りかえや土づくり、土壌診断どじょうしんだんなどを提案しています。

　日本だけの話ではありませんが、多すぎる量の肥料ひりょうをまくことで、肥料ひりょうの需要じゅようを必要以上に高めてしまっています。農地に養分を与えすぎると、地下水や土壌どじょうなど、環境かんきょうに負荷をかけ、作物が病気にかかりやすくなります。特に日本国内では、リン酸さんが多すぎる農地が多く、土壌どじょうの病原体が作物にもたらす被害ひがいが深刻しんこくになっています。肥料ひりょう代もむだにかかるので、肥料ひりょうを余分よぶんにまいていいことはありません。

　しかし、農家は三要素（窒素ちっそ、リン酸さん、カリウム）を同じ量ずつふくむ肥料ひりょうをよく使います。その理由は「安いから」で、多くの農地にリン酸さんをますますためこむ結果になっています。土壌診断どじょうしんだんをして、必要な成分だけを肥料ひりょうで補おぎなうのが1番いいのですが、日本の土壌診断どじょうしんだんは海外に比くらべて値段ねだんが高くなりがちです。