肥料について
窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(加里、カリともいう)(K)は、肥料の三要素といわれていて、それぞれ次のような働きがあります。
窒素:植物(特に葉)の成長をうながす リン酸:開花・結実をうながす カリウム:根の発達をうながす
また、水稲ではそれぞれ次のような働きがあります。
窒素:正しく管理することで水稲の収量を増やすことができる リン酸:分げつ、根の発達、開花をうながす カリウム:穂につく籾の数、成熟した籾の割合、千粒重(玄米1000粒当たりの重さ)を増加する
窒素、リン酸、カリウムのほとんどは、化石燃料や鉱物資源を化学的に合成してつくる「化学肥料」でまかなわれています。
化学肥料原料の輸入相手、輸入量
主な化学肥料の原料である尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムは、ほぼ全部を輸入しています。世界的に資源がかたよって、決まった場所にだけ多くあるので、輸入相手もかたよっています。
世界における肥料の消費量
世界における肥料の消費量は、年々増えてきています。日本の肥料消費量は、世界全体の消費量の0.5%となっています。
リン鉱石、塩化カリウムの採掘量と今後採掘できると考えられる埋蔵量
リン鉱石は、中国、モロッコ、エジプトの3か国で今後採掘できると考えられる埋蔵量の約8割、カリウム鉱石はカナダ、ベラルーシの2か国で約7割をしめています。埋蔵量と2021年の採掘量から、採ることができると考えられる年数は、リン鉱石で約320年、カリウム鉱石で約240年とされています。
止まらない肥料の値上がり
化学肥料のもととなる資源がつきてなくなってしまうのが、そう遠くない未来であることは、先ほど紹介しました。しかし、他にも肥料に対する問題が起こっています。肥料の値上がりが止まりそうにないのです。穀物の値段やコロナ禍による輸送費の値上がり、中国による環境保護政策の強化などの要素がからみ合い、日本では2021年の夏ごろから肥料の値上げが続いてきました。肥料の三要素の1つである塩化カリは、4分の1をロシアとベラルーシから輸入していたので、ウクライナ侵略に対する経済制裁により、さらに値段が高くなることが予想されます。必要以上の化学肥料をまく過剰施肥を、いよいよ見直す時期に来ています。
肥料節約の対策を
今回の値上がりは08年以来としてさわがれていて、この波がいつか収まるとしても、また肥料の値上がりが起こるというのは避けたいことです。資源は基本的に有限で、人口増加と農業の近代化が世界で進む以上、肥料の需要(人々がほしいと思うこと)は増え続けると考えられます。そうなると、化学肥料を節約して、ほかの肥料や堆肥に置きかえるという対策が必要になります。農林水産省は21年5月末に、安い銘柄への切りかえや土づくり、土壌診断などを提案しています。
日本だけの話ではありませんが、多すぎる量の肥料をまくことで、肥料の需要を必要以上に高めてしまっています。農地に養分を与えすぎると、地下水や土壌など、環境に負荷をかけ、作物が病気にかかりやすくなります。特に日本国内では、リン酸が多すぎる農地が多く、土壌の病原体が作物にもたらす被害が深刻になっています。肥料代もむだにかかるので、肥料を余分にまいていいことはありません。
しかし、農家は三要素(窒素、リン酸、カリウム)を同じ量ずつふくむ肥料をよく使います。その理由は「安いから」で、多くの農地にリン酸をますますためこむ結果になっています。土壌診断をして、必要な成分だけを肥料で補うのが1番いいのですが、日本の土壌診断は海外に比べて値段が高くなりがちです。
今回の肥料の値上がりをきっかけに、農家自身が土づくりを考えるなど、化学肥料の節約を本格的に始めるべきではないでしょうか。